【2023秋旅行③】ロスメルスホルム

2023年11月10日(金)

もう3日目
今日は朝から雨
移動と観劇だけの予定だから、天気崩れるのが今日で良かった

旅館のチェックアウトとお見送りを有馬の芸妓さんがしてくれた
短い間しかお話してないけど、あの距離感の作り方すごいな
丁寧で品があるけど親しみがあって柔らかい
お化粧も着物もきれいだった

有馬温泉からバスで1本
西宮に着いて、舞台前のカロリー補給
有名だけど食べたことないものを食べる、その2
551の豚まん

すごいむちむちで美味しかった

兵庫県立芸術文化センターはきれいでゆったりしてて素敵
こういうゆったりした空間のある新しいホールが我が街にも欲しい
駅近でまわりの施設も充実してて羨ましい…

「ロスメルスホルム」
2023年11月10日(金) 13:00
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

原作:ヘンリック・イプセン
脚色:ダンカン・マクミラン
演出:栗山 民也

舞台はずっとロスメルの屋敷のなかで進む
大きくて背の高い窓のある落ち着いた室内がハンマースホイの絵画っぽい

大きな窓から差し込む光とカーテンを揺らす風が
本当に外に繋がっているようなリアルさで、すごく存在感があった

森田さんの声、若いような年老いたような響きで
ロスメルの掴みどころのなさ、ピュアな善性、迷子のような頼りなさにはまってた

三浦透子さんも声が涼やかで、レベッカらしい固さがある
衣装のドレスのシルエットと、三浦さんの横顔が完璧すぎる…

後半ずっと涙が止まらず、どの台詞が、とか
どの感情で、とかがわからない
交響曲を聴きながら汗みたいに流れるものに似ていた
ホールを出たあとまで、気を抜くと込み上げてきてしまう
傷付いたような、救われたような
ううん…

戯曲を読んだとき、最後に2人はお互いがお互いを不自由にしていることに絶望して1つの出口に落ちていったような
お互いが追い詰めあってしまったように感じていたけど
今日見たものはお互いを絶望から救いたくて身を捧げあった結末だったと思う

元の自分に戻れない悲しみ
新しく欲したものも手に入らない絶望
ずっとレベッカ視点で観ていたな

戯曲を読んだ時の印象より、クロルとレベッカが最初から結構刺々しいというか
お互いを見下してる態度があからさまに感じた
ロスメルとクロルは子供のころからの関係性、同じ土地柄、価値観を共有するもの同士の繋がりも感じた

モルテンスゴール役の方すてきだったな
声が深くて柔らかくて、でもすっと届く
モルテンスゴールの「理想なしで生きていく才能がある」人物像がそこにいた

でも「理想なしで〜」の台詞はカットされてたな…
あれはモルテンスゴールとロスメルの違いを端的に表していると思ったし
物語の世界で起きていることを今の世界に置き換えて考える取っ掛かりになった台詞だったのだけど

他にも台詞が全体的にアレンジされてた
あとで悲劇喜劇に載ってる翻訳版をじっくり読む

森田さんの舞台は初めてだったのだけど
声も含めて身体表現が生み出す情感が繊細で生っぽくて
台詞と同じくらい、動き、姿勢、目線が語るものがあるんだなと実感した
初めてレベッカと触れ合うシーンにロスメルの深い愛情がみえて切ない…

どのレベッカが本当の彼女だったのか?とか、それを考えても仕方ない
一人の人間の人格は一つじゃない
それを受け入れ、レベッカを信じられたことでロスメルは救われたし
レベッカも絶望から救われた…と思うのだけど、
心の変化の恐ろしさを知った2人はそこで「めでたし」にはなれない
変われるから救いがあるのに、変わってしまうから安寧はない

観劇後、しばしぼーっとしてから次の目的地に移動
雨の湿気と帰宅ラッシュの人口密度が凄まじく
7kgのバックパックを片手で持ち上げ続けながら、吊り革にしがみついて汗だくになった
この移動がこの旅で一番しんどかった…

くたくたになって倉敷に到着して、いただいたうどんが大変美味しかった
まだ雨はぱらぱら降ってる